賃貸に潜む危険
私は実家から遠く離れた東京の大学に進学したので、18歳から一人暮らしを始めた。大学の掲示板で探して、見つけたのがCコーポ。都内とはいっても23区からは外れ、しかも駅から坂道を上ること15分というへんぴなところではあったけど、学生の身としては、とにかく安さが一番。Cコーポは学生専用ということで、敷地内の東西南北に2階建ての建物が4棟あり、男女2棟ずつに分かれていて、友達もすぐできて、楽しく過ごせた。
Cコーポの大家さんは、50過ぎくらいの世話好きなおじさんで、「親御さんから預ってるんだから、月に一度は顔を見て元気でいるか確認する義務がある。だから、家賃は引き落としだけど、水道代は毎月私のところに持ってきなさい。」ということだった。
正直その頃は、やっとうるさい親元を離れて暮らせるというのに、大家さんに干渉されるなんてまっぴらだと思ってた。でも、親の立場になってみると、そうして毎月無事を確認してくれる大家さんがいるっていうのは心強い。
そういえば、一度、大家さんのおかげですごく助かったことがあったっけ。
ある日帰宅して部屋の電気を付けると、なんとテーブルがひっくり返り、上にゴチャゴチャのせっぱなしにしていた勉強道具やらカセットやらお菓子やらが散乱している。しかも、カーペットには土足と思われる足跡が…!
「泥棒に入られた!」と思った私は、大急ぎで大家さんのところに知らせに行った。すると大家さんは、「ああ、○号室の人ね。私が入ったんですよ。」と言う。恐ろしいことに、私は朝出かけるときにコンロのガススイッチをきちんと切っていなかったらしく、ガス漏れしたらしい。ガス警報器を聞きつけて飛んできた大家さんが、靴を脱ぐ間ももどかしく部屋に飛び込み、散らかしたテーブルに蹴つまづきながらも窓に突進して、充満したガスを部屋から追い出してくれたのだ。
まさに、危機一髪!もし、親身に一人暮らしの学生のお世話をしようという大家さんじゃなかったら、大変なことになってたかもしれない。爆発でもして、周囲の部屋の人に死傷者が出たら…と思うと、ゾッとする。
今思えば、いい大家さんだったなぁ。もっといろいろ話とかすれば良かった。Cコーポは今もあるんだろうか?大家さんも、まだ元気でいるといいな。